前書き
安定化ジルコニアやセリア系の酸化物イオン伝導体やバリウムジルコネート、セレート系などのプロトン伝導体は高いイオン伝導度から燃料電池セルや水蒸気電解セルの電解質として実用または研究開発が行われています。
しかし、これらの固体電解質 (特にセリア系やバリウムジルコネート系など) は部分的な電子伝導性を示すため、漏れ電流による起電力の低下や電流効率の低下が問題となることがあります。
これらの材料の電子伝導度は酸素分圧依存性を持つため、漏れ電流について評価するためには電解質中の酸素分圧 (ポテンシャル) の分布を求める必要があります。
エクセルによる本計算シートは混合伝導性の電解質を用いた燃料電池セル及び電解セルにおける酸素ポテンシャル分布を計算し、IV特性や電流効率を求めるために作成しました。
このシートは使用範囲が限定的で、定常状態の取り扱いとなりますので、遷移過程の取り扱いなど、本格的な利用には、2021年にリリースした豊浦氏のPoNPsを強く推薦します。
[参考文献]
プロトン・ホール混合伝導性電解質における酸素ポテンシャル分布の計算と実セルの評価法への応用, 大西崇之, 宇田哲也, Electrochemistry, 87(3), 2019, 162–174.
DOI:10.5796/electrochemistry.18-J0089
PotCalcの概要
PotCalcでは以下のような仮定に基づいてセルのIV特性および電解質中の酸素ポテンシャル分布を計算します。
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系内で水蒸気の分圧 (化学ポテンシャル) が位置によらず一定である
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定常状態であり種々の局所平衡が成立している
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電極過電圧に比例して気相と電解質端部の酸素ポテンシャルに差が生じる
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ガスの物理リークによる起電力の低下はないものとする
動作環境(確認済のみ記載)
- Windows 10 (64Bit版)
- Excel 2016 (64Bit版)
お知らせ
2018年11月2日
PotCalc ver 1.02 を公開しました。